<観劇レポート>東京都高等学校文化祭演劇部門中央大会(高校演劇 東京都大会)

#芝居,#高校演劇

東京都高等学校文化祭演劇部門中央大会(高校演劇 東京都大会)の感想です。

最終更新:2023年11月14日 23時05分 更新終了

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
名称東京都高等学校文化祭演劇部門中央大会(高校演劇 東京都大会)
日程2023年11月11日(土)~11月12日(日)
会場東京芸術劇場(シアターイースト、シアターウエスト)
(東京都)

上演演目(観劇したもの)

No.学校名タイトル日時
1共立女子高校正しい変な人作:藤井菜穂〇イースト 11/11 10:10
2都立小平西高校終わんない作:葛生晏名と小平西高校演劇部〇イースト 11/11 11:25
3杉並学院高校敗れた緋色のその先へ作:辻畑楓〇イースト 11/11 12:40
4目黒日本大学ごめんね,ごめんで!作:めぐにち演劇部と今井友也〇◎ウエスト 11/12 10:10
5都立豊多摩へっきえき!作:木村陸久〇ウエスト 11/12 11:25
6都立国立ばっ、ととっととっ、だだだだ。パシャ、パシャ、パシャ作:スミ〇ウエスト 11/12 12:40

〇生徒創作 ◎顧問創作

満足度の記載について

私自身の満足度を、個々の演目ごとに記載します。 「CoRich観てきた」に投稿している個人的な満足度と同じ尺度で表現しますが、大会なので順位が付くため、1点きざみの5点満点では表現できないので、小数点まで細かく書いてます。

感想(ネタバレあり)

1.共立女子高校「正しい変な人」

作:藤井菜穂〇

感想

転校してきた女子、鬼龍院。転校初日から何だか奇行が激しい。「ムー」(じゃなくてルーだったかな)を読み、クラスの女子に同調しない事で、埋没しない事を目指す女子。ある日、かつていじめられて死んでしまった幽霊の花子に出会う。彼女と「人気者の変人」を目指すも、実は花子は幽霊じゃなかった。その事がきっかけで、クラスメイトと打ち解けていく話。


転校生が打ち解ける・・・よくよく考えるととても重いテーマだけれど、鬼龍院ほか、芝居としては終始コミカルで楽しく、あくまでも軽いお話として描いていて。重い話題を、どこまでもサラリと描くのがいい。観ながら、私自身が小学5年生の時転校してきた女の子が、精いっぱいリキんで、クラスの発表会で無理していた様子がありありと思い出されてきた。そんな過去の経験とのシンクロしていると、何だかウルウルしてしまう作品だった。転換がちょっともたつきがちだったのが残念。教卓から心の距離までメジャーで測って「素数」っていう先生好き。クイズのピンポンボタンが、鞄の中で鳴ってても、アドリブ?で返していたの面白かった。

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満足度

(4.0/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

2.都立小平西高校「終わんない」

作:葛生晏名と小平西高校演劇部〇

感想

演劇部。夏休みに大会の作品を作っているけれど、どこかダラダラしているようにも見える。垣間見る部員たちの過去と、家庭での事情。皆がそれぞれ事情を抱えてこの部室に来ている。「終わんない」と言いつつも、何とか大会に向けた作品を作ろうとする話。


一年生だけの演劇部だという事が、まず最初に語られる。「演劇部でーす」みたいに自己紹介的に出てくる。後々大会パンフレットを読むと全員が一年生で、ある程度リアルなのか。全員一年生・・・コロナで断絶した演劇部の再出発だろうか、などと思う。それ故、転換の仕方とか照明とかが、かなり粗削りな作品ではあったものの。各々が抱える事情が、回想シーンの中から見え隠れして、それがかなりド直球に投げかけられる事にドキドキ。いわゆる「毒親」との関係を思うと、私自身もひとりの子の親であるが故、胸が痛いというか、舞台を直視するのが大変だった。ラストで、ここで登場している部員は、今はもう演劇部を辞めてしまった、という説明があったけれど、全般的に、この物語がリアルな実話なのか、あるいはフィクションなのかは、実はちょっと分からない。回想シーンがかなりキツイ内容だけれど、演劇部のグルーヴ感には、どこか救われる部分があった。その後、翌日イーストで観た都立豊多摩「へっきえき!」に、テーマが似ているなと思い。

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満足度

(4.2/5.0点満点)

★★★★★
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3.杉並学院高校「敗れた緋色のその先へ」

作:辻畑楓〇

感想

幼馴染の生徒会長。昔はそうじゃなかったに、今は融通の利かない真面目な人になってしまった。幼い頃に出来なかったヒーローものの「緋色」・・・友達を事故で失うきっかけにもなってしまった・・・をもう一度やって欲しいという想い。文化祭の出し物を考えながら、生徒会長を緋色にする物語。


最近だと劇団チョコレートケーキの「ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-」とか、少し前だと埋れ木の「降っただけで雨」とか、「ヒーロー」モチーフにした作品が好みの私としては、とても楽しい。ヒーローって、登場しても、しなくても、何だか考える余白を与えてくれるので好き。全体的にコメディタッチが成功していて良い。お話はある程度最初の段階で「読めて」しまうので、それはそれとして、舞台のテンポがもっと良いといいのになぁというのを考えてしまう。当日、照明のキューが狂ってたのか、サスやエリア照明を外している個所があったけれど。テンポアップのためにブルー暗転と明転だけにするとか、出ハケをクロスでするとか、スピードアップの演出がもっと加速していれば、ほろ苦く涙のでるエンタメ作品に昇華出来たんじゃないかなぁ、なんて事を、好きな路線の作品であるが故に、アナザー演出として、ついつい考えてしまった作品だった。

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満足度

(4.0/5.0点満点)

★★★★★
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4.目黒日本大学「ごめんね,ごめんで!」

作:めぐにち演劇部と今井友也〇◎

感想

一人の教師が、教師としてスタートしてから、退職するまで。「ゴメン」=第五面談室での生徒指導の様子と、その年代の出来事や風俗を織り交ぜながら、教師の人生を回顧する物語。


主役の先生役の二人が、サバサバしたセリフ回しなのにとても演技が上手く、笑いも取れてて客席との一体感が半端ない。要はめっちゃ上手い演劇で楽しい。・・・でも、正直言うと、30分くらいまでは戸惑いながら観ていた。というのも、顧問との共同創作の脚本で、教師生活の話。テーマとして「教師の視点」・・・を高校生に語"らせて"しまう事は、果たして良い事なんだろうか?っていう事に思い当たったからだった。その心配が、30分過ぎまではずっと付きまとっていた。
後半、生徒指導を受ける生徒たちの物語が、徐々に連なっていくと、例えそうだとしてもこれはこれでいいのかなぁ、なんて思ってくる。どこか映画「陽のあたる教室」を思い出す内容に、徐々に絆されていって。
ラスト。先生二人が「タバコ」を吸い出すシーンに、突如心を射抜かれてしまう。例え顧問の先生の視点の、教師の物語だったとして。ここで「タバコ」を、先生役を演じる演劇部の生徒に握らせることが、高校演劇としてとても巧妙な表現に思えた。何かを「演じる」・・・想像力を使って他人の想いに思いを馳せる・・・って事を、生徒に突き付けている物語のように思えた。高校生はタバコを吸ったことが無い(はず)だし。ましてや、教師を退職するその間際のタバコの味なんて知りようがない。一連の物語から、演じる側が解像度を上げて想像する場所まで連れていくのが、演劇の凄さなのかなぁなどと思う。高校生が演じる教師はどこまでも戯画的で、あるいみ「ごっこ」なのだけれど(所詮、演劇なんてみんな「ごっこ」なのだが)。その「ごっこ」の中に、突然小さな真実の芽を見つけたような、そんなすごい体験になった。

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満足度

(4.7/5.0点満点)

★★★★★
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5.都立豊多摩「へっきえき!」

作:木村陸久〇

感想

演劇部。秋の大会に「青い鳥」をモチーフにした作品を作っているが、それぞれがそれぞれの、違和感、生きづらさ、悩みを抱えているのが垣間見れる。大会の練習をしながら、それぞれの悩みがコラージュ的に描かれる。その中の一人が、絵の奨学生としてイギリスに留学が決まったけれど、大会に向けて練習しているのでなかなか言い出せない。言い出したとたんに崩壊する演劇部。崩壊したまま終わる物語。


全出演者が舞台に出ずっぱり。場転という場転が無く、青い布を使った表現や、オルゴールなど、表現が巧み。その中で描かれる、直球ネガティブな今の葛藤。どうにもならない、それをありのままに表現して何が悪いの?っていう「結末の客席へのぶん投げ」。ラスト、こんな風にぶん投げてくるとは思いもよらなかったので驚いたけれど、それ故のリアルさをヒシヒシと感じる。あそこまで壊してぶん投げた後に、暗転でそのまま立ち尽くしたのち明転して、その場で礼をする終演の高校演劇って、初めて観たんじゃなかろうか。
海外に留学することをある種「逃げ」として捉えているのかなぁ、という点と、ラスト2度演じられる上演作品としての「青い鳥」の前に部長さん?が、突然「やめよう」ってキレていたのが、上手く捉えられなかったのだけれど、上手くつながらなくても、そこで巻き起こる感情の爆発に、とても納得感があった。
出ずっぱりでも飽きさせず、役者さんのレベルが総じて高い。どこか作風が、昨年の都立千早高校「フワフワに未熟」に影響受けたかな?とか思う。1日目の都立小平西高校「終わんない」にテーマが似ていると思い。

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満足度

(4.4/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

6.都立国立「ばっ、ととっととっ、だだだだ。パシャ、パシャ、パシャ」

作:スミ〇

感想

雨雲の水の精"アメ"は、退屈なので地上に降り立つ。そこには家族には放置されて、学校でいじめにあっている梨美が、正に自殺しようとしていた。仲良くなる二人。自殺を思いとどまる梨美。だけれど、アメが地上に降りたからなのか、地上には雨が降らなくなって、梨美のクラスメイトが困りはじめていた。別れなければならなくなる、"アメ"と梨美の物語。


水の精"アメ"と梨美を演じている主役の2人が、とにかく演技が上手い。ふたりの演技を堪能させてもらう芝居としてはとても良いのだけれど。
どこか童話的な、大人のお伽噺を思わせる物語。いじめ、親からの放置、その他テーマ性を織り込もうとはしているのだろうけれど。おとぎ話としての要素に注目しても、テーマ性の要素に注目しても、どちらも浅めで、若干ご都合主義に陥っている印象を受ける。もう少しどちらかの方向性を掘り下げられたらなぁ、と感じる作品。
雨雲の2人の会話が、どこか鴻上尚史「天使は瞳を閉じて」の天使たちの会話のようで好きだった。

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満足度

(3.5/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

審査結果


情報源

過去の観劇

舞台#芝居,#高校演劇