観劇

【観劇レポ】劇団俳優座「ファーム・ホール」

【ネタバレ分離】 劇団俳優座「ファーム・ホール」の観劇メモです。

初回投稿:2026年06月16日 0時29分
最終更新:2026年06月16日 0時29分

公演前情報

公演・観劇データ

項目 データ
団体名 劇団俳優座
劇団俳優座 No.362
ファーム・ホール
脚本 キャサリン・モア
演出 眞鍋卓嗣
日時場所 2026/06/15(月)~2026/06/30(火)
俳優座スタジオ(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

新しい世紀に俳優座ルネッサンスを目指して
1944(昭和19)年2月に青山杉作、千田是也、東野英治郎、小沢栄太郎、東山千栄子、岸輝子、村瀬幸子ら10名の同人をもって出発した劇団俳優座は、戦後の文化的混乱期にいち早く演劇復興の旗頭として活動を開始しました。以来半世紀余にわたり、常に高い理想をかかげ演劇の正道を目指して広範囲にわたる仕事を続けてきました。

 俳優座創立の理念は、最初の10年間で劇団・劇場・研究所の三位一体のシステムとして実を結びました。私たち自身の力で成し遂げた「俳優座劇場」建設と16年間継続した「俳優座演劇研究所付属俳優養成所」の活動は、日本現代演劇史に於ける最も輝かしい成果であると自負しております。1970年代以降、小劇場運動の開花とともに現代演劇の多様化と隆盛の時期が始まったわけですが、このような流れに対して、私たちの劇団のそれまでの活動が果たした役割はきわめて大きなものであったと言えると思います。

この間、私たちの創造活動の根幹を支えた理念は、劇団20周年を期に公表された記念すべき文書「私共の歩み・私共の考え」(千田是也)の中にきわめて詳細に、具体的に論述されております。これはもう40年近く前に書かれたもので、今の時代にそぐわない部分もありますが、その基本的な精神は今なお私たちの仕事を発展させていく上で、貴重な導きの糸となっています。これは全文を資料館に収めましたので、是非とも参照されることを希望します。

わたしたちの今後の活動の根幹は、永年の貴重な伝統を引き継ぐとともに、その中に積極的に新しい血を導入して自己革新を計ることにあります。そのために、まずレパートリーとしては、私たちが過去に上演した重要な作品を今日の視点から見直す仕事をさらに押し進めるつもりです。それと同時に、国の内外を問わず時代の息吹を体現した新しい作家・作品を積極的に見いだし上演することを目指します。また、内外の優れた古典的な作品でまだ上演していないものにも貪欲に挑戦するつもりです。

私たちの上演活動は、俳優座劇場をはじめとする各中小劇場での本公演が中心になりますが、稽古場を本拠とした研究・実験的要素をもった「ラボ公演」などを定期的に行っています。これは創作劇研究会にはじまり、日曜劇場、定期公演、六本木小劇場という流れを受け継ぐ仕事として、新しい作家、俳優、演出家などを発掘育成し、明日の劇団を担う新鮮な才能を生み出すことを中心課題としています。海外の演劇人との交流も可能な限り継続する予定です。商業劇場やマスメディアにも積極的に関わり、より広い層へ働きかける仕事も重視します。私たちの意欲のほどは、各年度企画の詳細によって具体的に確認していただきたいと思います。

以上のような公演活動を組織的に支えるために、各専門部の体制を整え、各部内の活動の質を一層高めるために、幹事会を中心に日常的に自己点検を繰り返して劇団全体の活性化を目指して努力しています。それにくわえて、各部署のセクショナリズムを排するために課題に応じて編成されたプロジェクトチームの活動も軌道に乗ってきました。そのひとつは「新人募集」です。2002年度(平成14年度)に15年目を迎える演技研究生の養成は順調に成果をあげ、俳優座の新しい力として各方面で大きな注目を浴びつつあります。もう一つは「企画委員会」を軸としたレパートリー発掘の活動です。こちらはまだ始まって日が浅いのですが、今後の劇団の方向を決定する上で重要な役割を負わされています。またそれらに加えて、このホームページを立ち上げるに当たっては「ITプロジェクト」が編成され、今後のメンテナンスを含めて新時代への迅速な対応を模索しています。

私たちはここ数年余り前、千田是也、東野英治郎、田中千禾夫というかけがえのない指導者たちを相次いで失いました。一方、時代は私たちの予測をはるかに超えた速度で急激に変貌しつつあり、時代の鏡であるべき演劇には深刻な課題が突きつけられています。私たちはいま、先人たちによって残された貴重な遺産を真摯に受け継ぎながらも、新しい時代に向けて生まれ変わるべく全ての体制を整えつつあります。とりわけ、新時代の幕開けとも言うべき21世紀初頭のこの数年間は、私たちの劇団史上、かつてない重要な意味あいをもつであろうことを痛感し、新生に向けて全劇団員の創意とエネルギーを集合・結集して取り組もうとしています。

劇団俳優座

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

幽閉された物理学者たち。
彼らはナチス・ドイツの
核開発に関わっていたーー

実話に基づく話題作 本邦初演

1945年、夏。
ナチス・ドイツは敗れ、ヒトラーは死んだ。
太平洋の激戦はまだ続いている。
イギリスの片田舎にある屋敷「ファーム・ホール」には、
ナチス政権下で核開発に関わっていたドイツの科学者6人が
「国王陛下の客人」と呼ばれ、丁重に扱われながらも幽閉されていた。

ナチス陸軍兵器局の主任だったディープナー。
彼に代わり象徴的リーダーとなったノーベル物理学賞受賞者ハイゼンベルク。
ハイゼンベルクの親友にして同僚ヴァイツゼッカー。
ハイゼンベルクの教え子バッゲ。
原子核分裂を発見したノーベル化学賞受賞者ハーン。
公に反ナチスの立場をとるノーベル物理学賞受賞者フォン・ラウエ。

戦争の混沌から隔離され、チェスを指し、壊れたピアノを修理し、芝居の稽古をして時間をつぶしていた。
そこへ、ある一報が届く───

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目 データ
観劇日時 2026年06月15日
19時00分〜
上演時間 125分(途中休憩なし)
価格 3500円 全席指定 見切れ席

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。

感想(ネタバレあり)

ファーム・ホール

ストーリーは事前紹介の通り。ある一報とは…当然広島への原子力爆弾投下の報。マンハッタン計画…なんて言葉も当然伝わっていない状況。ドイツの研究者も同じものを目指していたのだから、その成功が、科学的にも政治的にもいかに凄いことかを正確に理解出来るのは、皮肉にも幽閉されていたドイツの物理学者だった。しかしもし、ドイツがこの開発に成功していたら、ヒトラーは一体どうなっていただろうか…という事も研究者の頭にはよぎる。しかし純粋に、ドイツはアメリカに技術の点でも政治の点でも負けた…という事もわかる。そして自分たちが仮にも解放されてドイツに戻れたとしても、ドイツは如何にして核兵器の開発に至れなかったのか…という質もに答えなくてはならない。そんな科学者たちの葛藤を、幽閉された屋敷をタイトルにした物語。

いつもの通り事前にストーリーを読まなかったものだから…ドイツの物理学者を集めて一体何の話なのだろう…というのが前半の印象。どうやらドイツは降伏した後のようだけれど、幽閉されてはいるものの、格調高い屋敷のセットで割と良さそうな生活。元ナチス党員は責められているけれど、それでも学者同士の共同生活。ノホホンととした時間が続いて、ちょっと眠かったのだけれど…。広島爆弾投下の報から突然葛藤が始まる物理学者たち。時間にして開演後55分くらい。そこからはもう…前半にあった元ナチス党員に対する軽蔑の視線なんて全く問題にならないほどの、科学者たちの内省だったり議論だったりが始まる。

科学者たちにとって「世界が崩れ落ちたような…」っていう感覚は、正にこういう事なのだろうなぁ。舞台を観ている私自身も、感情移入からか、こんな状況に居合わせたら頭の中がクラクラしてくるな…と思っていると、本当に視界がクラクラして見えてくる。あれ、おかしいな…と思ったら、舞台は実は回転舞台で、それまで固定していると思われていた椅子や机が、突然ゆっくりと周りだす。正に「世界が崩れる」感覚を味わい、これが実に効果的。二面に客席がある舞台だったが、ゆっくりゆっくりと回ることで「世界がひっくり返るような」という表現をしつつ、「科学者たちのそれぞれの立場を、(回転することで)様々な立場から見ることができる」…という、たくさんの視点で彼らの葛藤を眺めることが出来るようになっている。客席入場時は、舞台と客席の境目にカーペットが敷いてあるも曖昧で、何でこんなに雑なんだろうと疑問に持つのだけれど…回転舞台の境目を隠しているが故の舞台セットだったのか…とある程度回転の効果が見えてきたところで脱帽。登場人物の「心情の表現」を回転舞台を使って表現されたのって、私自身が観た演劇でも初めてかもしれない。

それぞれの葛藤が、どれ程史実に基づいているかは私にもわからないものの…ハイゼンベルクの、「目的が一致していない中、ユダヤ人の科学者を排斥して、お互いに足を引っ張らせることをさせているドイツには、そもそも核兵器は作れなかった…(大意)」というがとても引っかかる。それはある種の安心をもたらしてくれるけれど同時に、マンハッタン計画みたいな組織化が、イデオロギー的な同意に基づいた上で出来ていたならば、核兵器はもっと恐ろしい方法で使われていたかもしれない…という事でもある。

ラストのハイゼンベルクの長ゼリ主張は、ちょっと蛇足かな…と思ものの。原爆・核開発問題で全く考えたことがなかった…敗戦国ドイツの物理学者が広島の瞬間何を思ったか…という焦点の当て方だけでも、いろいろと新しい角度での思考を迫ってくる作品だった。

俳優座、やっぱり役者さんが上手すぎる。中でも、ディープナー役の斉藤淳、ハイゼンベルクに「2トンじゃなくて…!」と喰ってかかる場面がとても印象に残る。

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