【ネタバレ分離】 キルハトッテ「ガラパゴス」の観劇メモです。


もくじ
初回投稿:2026年03月14日 11時20分
最終更新:2026年03月14日 11時20分
公演前情報
公演・観劇データ
| 項目 | データ |
|---|---|
| 団体名 | キルハトッテ |
| 回 | キルハトッテvol.6 |
| 題 | ガラパゴス |
| 脚本 | 山本真生【キルハトッテ/にもじ】 |
| 演出 | 山本真生【キルハトッテ/にもじ】 |
| 日時場所 | 2026/03/10(火)~2026/03/15(日) 水性(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
劇作家・演出家の山本真生と俳優の吉沢菜央によって構成される団体。
『あるかもしれない"きっと"を切って貼ってコラージュする』をキャッチコピーに、今を生きる人々の感覚を、思いもよらないフッと笑ってしまうような身近なモチーフや奇妙な設定に繋げ、複数のそれらをコラージュする作品が特徴。
2022年4月、王子小劇場(現インディペンデントシアターOji)の主催する演劇祭、佐藤佐吉演劇祭2022の関連企画である旗揚げ3年以内の団体を集めたショーケース公演「見本市」にて旗揚げ。
王子小劇場で年間上演されたすべての公演を対象とした賞、佐藤佐吉賞2022にて優秀演出賞、佐藤佐吉賞2025にて優秀脚本賞、優秀主演俳優賞を受賞。
佐藤佐吉演劇祭2024、
豊岡演劇祭2024フリンジショーケース参加。
過去の観劇
- 2025年10月10日 キルハトッテ「ながいみじか〜い」
- 2025年05月23日 キルハトッテ「チョコレイト」
- 2024年03月15日 キルハトッテ 「そろそろダンス。」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
中絶手術から目覚めると、サチコの下半身はイグアナになっていた。
その日から、サチコは手術を行った産婦人科の病室に匿われ、特別な治療を受けながら生活することになる。本作は、日本における人工妊娠中絶を取り巻く事象を扱い、「私たちのSRHR」をテーマとしています。
【SRHRとは?】
セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の略。
性生活に関すること、避妊、中絶、妊娠、出産などについて自分で決める権利を持つこと。正しい知識をもとに、ケアを得られることなどの基本的人権の概念。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
| 項目 | データ |
|---|---|
| 観劇日時 | 2026年03月13日 14時00分〜 |
| 上演時間 | 85分(途中休憩なし) |
| 価格 | 3500円 全席自由 |
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
キルハトッテ「ガラパゴス」
バイトから正社員登用面接の直前。中絶の手術から目が覚めたら…下半身がイグアナになっていた女。子供の父親の彼氏は優しくしてくれるもののどこか的外れ。看護師は医師の指示が無いと何もできない。実家から姉心配してやってきたが、女は実家から飛び出して東京に来たらしいので気まずい。バイト先に行けば仲の良い同僚が正社員に登用されていた。イグアナは、海外の島にある病院でないと治せないらしい。転院のための船に乗るのを拒否して車を走らせば、彼氏を偶然ひき殺してしまった。看護師と姉とバイト先の同僚とで来るまで逃避行しても…焼肉ライクまで医師は追いかけてくる。…とストーリーを書き下してもイマイチ伝わりそうにない、中絶手術から始まる一見ドタバタコメディに見える作品。
ドタバタと進むナンセンスなコメディが、まずは純粋に演劇として面白い。イグアナになっちゃった…とベットから起きるとしっぽをさする女。どうしてそうなるの?という展開。客席には徐々にクスクス笑いが増幅していく。イグアナは草食だから、みかんしか食べれないし焼肉ライクでメシ食ったら全部ゲロゲロ戻している。…ナンセンスすぎる展開が、ごくごく自然な会話からトントン拍子に展開していくのがまずは面白い。この部分だけでも筆の力を感じる作品。
ただ、描こうとしているテーマは、お話のコミカルさとは裏腹にとても深刻。イグアナになってしまう事が中絶をしてしまった好奇な目に晒されたり…、あるいは自責の念にとらわれる的な事のメタファーになっていたり。(女性の)看護師は(男性の)医師に指示を仰がないと何も出来なかったり。あるいは姉が妹の世話をしに来たのは、どこか「実家から離れたい」思いが見え隠れしたり。職場の同僚はシングルマザーで、明るく振る舞っているもどこか世間とのズレを抱えていたり。…いわゆる「フェミニズム的なもの」を強く意識して根差している事は疑いもないのだけれど、割と焦点を一つに当てずに、メタファーによる描写の群像劇的に描く。それ故に、女性をめぐる問題を何か一つに焦点を当てた訳ではないものの、中絶から始まる周りの事々がむしろメタファーだからこそ生々しく描かれて観ていて切なくなる。
中絶の手術をした後にイグアナになったのに、医師も看護師も「イグアナになったことは中絶とは直接関係ない」と言い続けるのが特に気になって印象に残る。最初は医療ミス的なものを疑う女だが、どうやらそうでもないらしい…という展開。メタファーという点で考えていくと、イグアナ的な変異だと認識するようなものは、中絶という事実とは関係なくもともと社会に存在していた偏り…的な意味なのかもしれない。何度も繰り返される「直接関係ありません」という言葉が、どうにも女性の置かれている立場についての思考を迫ってくるのが怖い。
結果的に群像劇的なのでフェミニズムの中でもテーマが拡散している感はあったものの、クスクス笑って観ているのに同時にいろんな思考を迫ってくる演劇だった。
ふと菅野美穂が主演した「イグアナの娘」なんてドラマを思い出したりもした。テーマ的には重ならないが、人は人をイグアナにしたいものなのだろうか。アフタートークでは、イグアナをモチーフにしたのはガラパゴス諸島で独自の優性の進化を遂げたものを織り込みたかったから…と作者が話していた。そうなのか…これは進化を描いているのか…そこまでは読み取れずだったので意外だった。



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