<観劇レポート>iaku 「The last night recipe」

#芝居,#iaku

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 iaku「The last night recipe」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名iaku
The last night recipe
脚本横山拓也
演出横山拓也
日時場所2020/10/28(水)~2020/11/01(日)
座・高円寺1(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

劇作家・横山拓也による演劇ユニット。横山のオリジナル作品を日本各地で発表していくこと、また各地域の演劇(作品および情報等)を関西に呼び込む橋渡し役になることを指針に、2012年から本格的に活動を開始。作風は、アンタッチャブルな題材を小気味良い関西弁口語のセリフで描き、他人の議論・口論・口喧嘩を覗き見するような会話劇で、ストレートプレイの形態をとる。小さな座組でカフェやギャラリーなど場所を選ばずに全国を巡るミニマルなツアーと、関西屈指のスタッフ陣営を敷いて公共ホールなどを中心に組む大きなツアーを交互に実施。ほとんどの作品で上田一軒氏を演出に迎え、関西の優れた俳優を作品ごとに招くスタイルで公演を行う。繰り返しの上演が望まれる作品づくり、また、大人の鑑賞に耐え得るエンタテインメントとしての作品づくりを意識して活動中。

iaku

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

結婚してから毎日、昨晩食べた料理をネットにアップし続けている、ある夫婦の晩御飯の記録『ラストナイトレシピ』。〝レシピ〟とは名ばかりで、完成した料理の写真を1枚載せるだけ。ときにはカップ麺やスーパーの惣菜、ときにはファミレスの写真がアップされることもある。「私たちの最後の晩餐は何やろね」。そんな他愛もない話をしてからしばらく、突然妻が亡くなった。まだ30歳だった。あれから、妻の両親が「申し訳ない」と必要以上に干渉してくる。夫の父親が一緒に住まわせてほしいと訪ねてくる。妻の昔の恋人や、自称〝親友〟が弔問にやってくる。『ラストナイトレシピ』を繰りながら、一人になった夫はこれからの生活について思料する。

観劇のきっかけ

好きな劇団です。

過去の観劇

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2020年10月28日
19時00分〜
上演時間145分(10分休憩含)
価格4000円 全席指定

チケット購入方法

劇団ホームページからリンクで飛んで、
チケットをクレジットカードで購入しました。
セブンイレブンでの発券番号をもらったので、引き替えました。

客層・客席の様子

男女比は6:4くらい。
40代upが目立ちましたが、若い方もいる客席でした。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・会話劇
・シリアス
・静か
・考えさせる

観た直後のtweet

映像化の情報

情報はありません。

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。
ボロい、地元の人しか行かないようなラーメン屋。親父の息子、良平が、中卒のまま働いて8年。23歳。Webのラーメン屋紹介企画で取材に来た夜莉は、その男の境遇を哀れんで、ルポにしたいと思う。ベトナム?の村で過ごした体験をルポにした先輩は、本出して名前も売れた。夜莉が試しに書いてみたルポに、先輩に「視点が対等じゃない」とダメ出しされ。それをきっかけに、そのラーメン屋の男に取材対象として結婚して欲しいと申し込み、家に連れ帰る。2人の淡々とした共同生活をして。取材でコロナのワクチンを打った夜、夜莉は急死してしまう。残された男、良平は、毎日の食事を写真に記録してブログにアップしてた彼女の記録を読み、彼女との日々を振り返る。。。。こんな話を、夜莉の死を出発点に、過去未来、行ったり来たりしながら、時系列を飛んでえがく物語。

すごく色んな事を考えさせられる。考える事が深いから、観ていて飽きが来ることはないのだけれど、結局、何に焦点を当てればよかったのかな、という事を思う。なので、涙とかは一切出てこない。淡々と生活を切り取ったもの。時系列が直線ではなく、過去・未来を行ったり来たりする。

どんな事を思ったのかを、書き留めてみると。

夜莉には、良平に対する哀れみがあって、そこから救い出すためにルポを書こう、という感情がある。でも実際には、良平は、日々父とラーメン屋の下働きをしている事が、実は平凡でも幸せだったのではないか、という視点が見えてくる。「世界を広げて、どんどん全成長していくのが善」と考え夜莉に、少し微笑みながら「それは夜莉さんの世界だよね」と言う良平。何が確かなものなのか、分からなくなってくる。幸福っていうのはなんなんだろう、というのを考えたり。

夜莉のモノの見方は、やはりどこか歪んでいるのかもしれない。良平を取材した時に、「父親から搾取されている息子」という見方しか出来ない。ラスト近く、先輩の綾が良平の父と話すシーンでは、搾取する父のイメージよりもむしろ、父の人間味みたいなものが見えてくるし、やりとりをみていると、ベトナム?の村のルポの本が売れて、名前を上げた、というのも納得できる。そんな、綾と夜莉の、人の感情の紐解き方、関わり方の違いも浮き彫りになっていく。結局、ルポの対象と結婚してしまう夜莉だが、良平に「変に作らないで、ありのままを取材させて」と言うものの、実際ありのままだと満足しない。良平がちょっと気を利かせば、「作ってる」と言われる良平。対象に近づけは近づくほど、対象が見えなくなっていく。むしろ取材の対象なんて、ある人間の一つの解釈でしかないのだから、書き手が接触した段階で変わってしまうのに、その変化を、夜莉は、頑なに否定しているようにも見える。ジャーナリスト・映画監督の森達也氏の「ドキュメンタリーは嘘をつく」なんていう言葉も思い出したりする。

夜莉は、良平との結婚生活で、日々の食事を写真とともにブログにアップしている。スマホを持たない良平は、夜莉の死後、夜莉のスマホでそのブログを読む。二人で食べた食事が、紹介文とともに淡々とアップされているブログ。風変わりな結婚だったけれど、そこには生活があり、生があった。そんな事をかみしめる良平。コロナの混乱や自粛の設定もあり、ただ淡々とした生活が、なによりも二人の関係を表すものなのかな、という事も考える。

・・・そんな思考が、次から次へと浮かんできた。いろいろな事が浮かんでくる分、作品全体として、どこに焦点を当てて解釈すればよかったのか、というのが、ちょっとつかみにくい作品でもあった。あるいは、特にテーマとして、どれかが支配的、というのは無かったのかもしれない。作品全体としては、テーマを上手く読み取れなかった分、とても淡々として、あっさり白身魚、という感覚の演劇だった。

場面の描写と、感情の描写が素晴らしい。解像度が高い、というのだろうか。シーンごとに、時間が過去・未来と行ったり来たりするし、抽象的なセットの中での演技にも関わらず、「今どの時間軸のシーン」というのが、セリフを発する前から観客に伝わってくる。表情、セリフ他、シーンを描写する力が強い。単純に言えば、演出力の高さ、なのだろうけれど、何が観客にそういう風に思わせているのだろう、というのがズバリと分からずだったのが、ちょっと種明かししてほしくて、もどかしかった。

印象に残った役者さん。杉原公輔、表情が素晴らしい。抜け殻のような状況と、結婚生活で徐々に生活感を取り戻していく様と、夜莉の死後の本当に無表情な状況の変化がすごい。時間があちこち飛ぶのに、その一貫性もすばらしい。伊藤えりこ、あの、はきはきした感じと、ラスト、父と話すシーンが好き。差入はウイスキー。緒方晋、お父さんの立場の違いによる見方の変化、よかった。スナックでクダ巻いてるのも好きだったな。


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