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<映画レポート>「キーパー ある兵士の奇跡」

#映画

【ネタバレ分離】昨日観た映画、「キーパー ある兵士の奇跡」の鑑賞レポートです。

映画基本情報

タイトル

「キーパー ある兵士の奇跡」

2018年製作/119分/G/イギリス・ドイツ合作/原題:The Keeper
配給:松竹

キャスト

バート・トラウトマン:デビッド・クロス/マーガレット・フライアー:フレイア・メーバー/ジャック・フライアー:ジョン・ヘンショウ/スマイス軍曹:ハリー・メリング/ロバーツ:デイブ・ジョーンズ/マイケル・ソーチャ/バーバラ・ヤング/クロエ・ハリス/ミッキー・コリンズ/ゲイリー・ルイス/デブラ・カーワン

スタッフ

監督: マルクス・H・ローゼンミュラー /製作:ロバート・マルチニャック,クリス・カーリング,スティーブ・ミルン/脚本:マルクス・H・ローゼンミュラー,ニコラス・J・スコフィールド/撮影:ダニエル・ゴットシャルク/衣装:アンケ・ビンクラー/編集:アレクサンダー・バーナー/音楽:ゲルト・バウマン

公式サイト

キーパー ある兵士の奇跡
(公開後、一定期間でリンク切れの可能性あり)

映画.comリンク

作品解説

イギリスの国民的英雄となった元ナチス兵のサッカー選手バート・トラウトマンの実話を基に描いたヒューマンドラマ。主人公トラウトマンを「愛を読むひと」のデビッド・クロス、妻マーガレットを「サンシャイン 歌声が響く街」のフレイア・メーバーがそれぞれ演じた。

あらすじ

1945年、イギリスの捕虜となったナチス兵トラウトマンは、収容所でサッカーをしていた折に地元チームの監督にスカウトされる。その後、名門サッカークラブのマンチェスター・シティFCにゴールキーパーとして入団するが、元ナチス兵という経歴から想像を絶する誹謗中傷を浴びせられてしまう。それでもトラウトマンはゴールを守り抜き、やがてイギリスの国民的英雄として敬愛されるように。そんな彼には、誰にも打ち明けられない、秘密の過去があった。

満足度

★★★★★
★★★★★

(3/5.0点満点)

鑑賞直後のtweet

ここから先はネタバレあり。注意してください。

感想(ネタバレあり)

「伝記」と「戦争」と。2つの要素の間でどっちつかずな映画だな、と思った。

一方は、実在の人物で元ナチス兵の名キーパー、バート・トラウトマンの、純粋な「伝記」映画でもある。もう一方には、第二次世界大戦後の「戦争」とその傷跡の物語。この両者の間で、どっちつかずの展開で行き来するので、どちらに軸を置いて見るのがいいのか、終始戸惑いながら見ていた。

バート・トラウトマンという人物について、この映画で初めて知った。こんな人がいたのか!、という純粋な驚きがあった。収容所暮らしから、名門サッカークラブ「マンチェスター・シティFC」にスカウトされて国民的なスターになっていくまでのストーリーは、1人のスター選手の伝記的でもある。1人のヒーローの歴史と共に第二次世界大戦後から1960年代位までのイギリスを、美しい映像で描くのは、見ごたえがある。マーガレットとの恋物語も、若干ベタではあるものの、美しい映像で、甘美に描かれていた。

一方、その物語の中に、戦後の傷跡の物語が入ってくる。ドイツ人に対する憎悪と「許し」の過程を、様々な人の感情を基に描いていく。ドイツ兵も、好き好んでナチスの兵士になったわけではない。激動の時代の中、従わざるを得なかった現実がある。戦場で出会った子供を、同僚の兵士がからかって射殺した時、助けられなかった事をずっと恥じているトラウトマン。あるいは、ナチスの強制収容時で働いていた人が、収容所の再教育で追い詰められて、リンチで殺される描写なども描かれる。国と国が戦争した時に、一兵士、個人では何の抵抗も出来ない。それなのに、戦争犯罪として処断されそうになる様。劇中のセリフを借りていうなら「それしか選択肢がなかった」なのだろうに。「私は貝になりたい」のような悲劇も、丁寧に描かれている。

「伝記」「戦争」のふたつの要素が絡み合っているのに、ストーリー上は、「伝記」の要素の方が圧倒的に強く、物語を支配している。時間軸も、過去から未来に一方向に流れていく。そこに、変なタイミングで「戦争」の話が紛れ込んでくる感覚がある。

例えば、息子を事故で亡くしたエピソード。息子の死を、子供を救えなかった事への罰と結びつけてしまうのも、少し安直な設定のように感じる。罪の意識という内面的な描写なのでどこまで「実話」なのか疑わしい。「伝記」の物語に対して、どの程度真実なのだろうか、と疑問を持たざるを得なくなる。マーガレットとの出会いの恋物語については、映画的にも脚色が許されるだろうけれども、戦争の苦悩は、事実に基づかないと話の根幹が揺らいでしまう。結果的に、「伝記」のストーリーに「戦争」の悲劇という味付けをしたように、私には見えてしまった。

戦争の悲劇を中心に描くのなら、過去から一方向の時間の描き方ではなく、未来からフラッシュバックを中心に据えるする物語で、心の傷を描く方が効果的だったように思う。「伝記」として描くなら、戦争描写をもう少し抑えて、"器用なフォレスト・ガンプ"的に描く方が、楽しめたんじゃないかなぁ、と思う。どうにも居心地の悪いチグハグさを抱えながら、終始見ていた。

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