<映画レポート>「BOLT」

#映画

【ネタバレ分離】昨日観た映画、「BOLT」の鑑賞レポートです。

映画基本情報

タイトル

「BOLT」

2019年製作/80分/G/日本/配給:ガチンコ・フィルム

キャスト

男:永瀬正敏/井沢:佐野史郎/平野:金山一彦/後藤ひろひと/テイ龍進/秋子:月船さらら/根本:吉村界人/佐々木詩音/大西信満/堀内正美/吉田(声):佐藤浩市

スタッフ

監督: 林海象 /脚本:林海象/プロデューサー:根岸吉太郎/美術:ヤノベケンジ,竹内公一,磯見俊裕/撮影:長田勇市

公式サイト

BOLT
(公開後、一定期間でリンク切れの可能性あり)

映画.comリンク

作品解説

「私立探偵 濱マイク」シリーズの林海象が監督・脚本を手がけ、盟友・永瀬正敏を主演に迎えて7年ぶりに発表した長編映画。2015~17年に製作した「BOLT」「LIFE」「GOOD YEAR」の3つのエピソードで構成。佐藤浩市が声の出演。現代美術家ヤノベケンジが香川県高松市美術館内に制作した近未来的なデザインの巨大セットで撮影された。

あらすじ

日本のある場所で大地震が発生した。その振動で原子力発電所のボルトが緩み、圧力制御タンクの配管から冷却水が漏れ始めた。高放射能冷却水を止めるため、男は仲間たちと共に命懸けでボルトを締めに向かう。この任務をきっかけに、彼の人生は大きく変わっていく。

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5.0点満点)

鑑賞直後のtweet

ここから先はネタバレあり。注意してください。

感想(ネタバレあり)

現実世界と、童話的・寓話的な嘘の世界。その二つが、独特の混じりあい方をした表現。純粋に面白い表現だな、と思った。

舞台は言わずもがなの、東日本大震災と、福島の原子力発電所。しかし、劇中も解説文にも、その事ズバリは表現されていない。2011年の地震の事を思うと圧倒的に現実感のある世界なのに、どういう訳か、遠い異国だったり別の現実世界のような、妙な非日常、嘘くささもある世界観が描かれる。原子炉、と呼ばれる装置はどこか「心臓」を思わせて、原子炉には見えない。あんなでっかいレンチでボルトを締めるのか?とか疑問だ。作業スーツの胸についてる放射線計は数字がピコピコ動いて、まるで昔のドラマか映画の「博士の研究室の謎の装置」のような様だし。現実なのに現実じゃない。何だか比喩的な表現の世界にさえ思えてくる。

描かれるのは、そんな世界でなんとか生きていく男の様子。

エピソード1。レンチを回している様子は、実際の原発での作業というより、若い世代に残してしまった負の遺産に対する罪滅ぼしのように見えてくる。しかも、「こんな近代的な設備で」というセリフの通り、回すのは古典的なレンチ。1人でどんなに頑張っても解決しない。若者の作業員が何とかBOLTを締めたかと思えば、またすぐにあふれ出てきてしまう。どこか滑稽さも併せ持つような隠喩なのに、厳しい現実を投影した状況を描いている。なんだか、変な感覚にも囚われてくる。

エピソード2、エピソード3は、その世界の中で、失われたものが見えてしまう様子。孤独死した男の影だったり、津波で亡くなった妻の影だったり。線量オーバーで原発では仕事ができないから、古い自分の車の修理工場でたたずんでる。ジャイロスコープを治しながら。エピソード3は特に、昔見た林海象監督の作品群を思い起こさせるような映像だった。

ごくごく真面目に、誠実に、原発での悲しい事故の現実を描いているけれど、どこか異世界の事のように見えてしまうこの映画を見て、実際に原発で被害にあった人からすると、生理的に受け取れないと思う人がいるのではないか…という事に思い当たった。原発事故の当事者の人の感想を聞いてみたいという想いが生まれてきた。

加えて、10年20年後・・・あるいは50年後にこの映画を見ると、その時の社会情勢や、原発問題処理の状況、東日本大震災の記憶の薄れ具合などで、同じ映画を見て違う意味付けがなされたりするのではないか、と感じた。後世に残したい名作・・・という類ではないけれど、少し時間を置いた後に、また見てみたいと感じた。

永瀬正敏、「星の子」で見た時は、「あれ、どうしちゃったの?」というくらいカッコ悪くなっていたのだけれど。この作品では、過去「私立探偵 濱マイク」シリーズなんかで見たような、あのカッコよさがにじみ出ていた。

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