<観劇レポート>ショーGEKI「脱出病棟」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 ショーGEKI「脱出病棟」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | ショーGEKI |
回 | 下北ショーGEKI夏祭り公演2021 |
題 | 脱出病棟 |
チーム | Aチーム |
脚本 | 羽広克成 |
演出 | 羽広克成 |
日時場所 | 2021/07/08(木)~2021/07/18(日) 「劇」小劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
『バカかっこいい!』 をコンセプトに、1999年、『チャンピオン』(於:全労済ホール・スペースゼロ)を旗揚げ公演として活動開始。
主宰:羽広克成<脚本/演出担当>を中心に、1999年に劇団「ショーGEKI」を設立し活動を始めた。
劇場という生の空間をフルに使い、立体的で生命力溢れる作品創りを第一の目的に、常に観客と一体化する作品を目指して、年間数回公演を行う。
過去の観劇
- 2024年11月06日 【観劇メモ】ショーGEKI「ベッドトークバトルレジェンド」
- 2023年12月09日 ショーGEKI「アンドロとギュノス」
- 2023年07月27日 ショーGEKI 女子公演シリーズ「男ZERO0〜オトコ・ゼロ」
- 2022年07月18日 ショーGEKI「もう泣くもんかと誓った私の瞳は涙の虜」
- 2020年11月26日 ショーGEKI「リメンバーユー 同窓会にはタイムスリップして参加します!」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
「僕らはまだ治っていない、だからこの包帯がとれないんだ。」
鉄格子で閉鎖された病棟に閉じ込められた人々、片目を治療中の女、頭を治療中の男、全身を治療中の男、悪い性格を治療中の姉妹・・。彼らがこの病棟を脱出するためには出口を見つけるだけじゃなく、その体に巻かれた包帯もとらなければならないのだ。
劇場空間を鉄管で巨大なジャングルジムにして上に下に動き回る役者達。
これは全てからの解放を目指して行われる脱出ゲームだ!
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年7月14日 13時30分〜$$ |
上演時間 | 110分(途中休憩なし) |
価格 | 4000円 全席自由 |
チケット購入方法
劇団ホームページからのリンクで、Webで予約しました。
当日、受付で現金でお金を支払いました。
客層・客席の様子
男女比は4:6くらい。
平日マチネの影響かもしれませんが、40代upの女性が目立った気がします。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・コメディ
・シリアス
・考えさせる
観た直後のtweet
ショーGEKI「脱出病棟」Aキャスト110分休無
面白かった!前半はちょっとループ感あるも、結びでいろんな事を考えさせられた。カフカの不条理小説「掟の門前」と映画「CUBE」を思い出す。舞台セットの活かし方がいい。性格悪い姉妹いいな。性格悪い自分を、恐れながらも愛したいなぁ。超オススメ! pic.twitter.com/EKDclm5cyQ— てっくぱぱ (@from_techpapa) July 14, 2021
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
登場人物全員が、怪我をしていて、全員包帯をそれぞれの場所に巻いている。包帯している個所を入院して治療していると思い込んでいる人々が、病院という名の監獄から脱出する話。不条理劇。なんとなく最初から、不条理劇かなー、とは思いながら見ていたけれど、やっぱりそうだ、と確信を持てたのは割と最後の方。登場人物が全員集まるラストは、いろいろ含みを持った言葉に、色んなことを考えずにはいられなかった。
セットがすごい。「劇」小劇場、の幅いっぱいに、単管の骨組みを組む。そこを囚われた監獄病棟に見立てて、役者さんが行ったり来たり。こういうセットの場合、体重のかけ方を遠慮したりする演技になりがちだけれど、不安定な場所を、時にアクロバティックに行ったり来たりする。天井から登場するシーンもあり、ここが「劇」小劇場なのにびっくりする。
2人~3人チームごとの会話の短いシーンの連続で進行する物語。チームとチームが出会って話をする、、、、という展開なので、何となく物語の状況が見えてきたところから、ちょっとループ感というか、飽きに近い感覚は否めなかったものの。「名札の半分しか読めない、真実しか見えない目」とか、「怪我していると言ってるのにパイプを元気に渡り歩く人」とか、「聞こえているはずなのに聴こえていないフリ」とか、そういうちょっとした事が、何だか身につまされるというか、人間のサガみたいなものを表しているように感じる。
コメディタッチの描き方も多々あるけれど、あまり笑えないというか。客席で観ていると苦笑いしか出来ない感覚。特に、途中で出てくる「性格の悪い姉妹(性格を怪我している姉妹)」の2人が、何だか鬱陶しいのに、言葉がチクチクと胸に刺さる。結局彼らが恐れているのは、世間の目ってやつなのかもしれないけれど。恐れている自分を愛して、ひねくれて、むしろ「性格悪い自分を楽しんでいる」っていうのが、何だか観てて痛くてたまらない。大基男性で、女性に性転換して、でも男性に戻って、今女性・・・(とその逆)も、ジェンダーレスを議論し過ぎて、一体何が本質なのか見失っている今の社会の縮図のようにも見えてくる。
あるいは、一人だけ怪我をしていない学生さん。個性がないと悩むのだけれど。えんじ色のペンキ(?うろ覚え)で染めるんだ、と諭す先生。背負っている痛みは、それは実は個性で、それを愛したり、憎んだり、無視したりしている他の登場人物との対比が面白い。・・・弱点を愛せよ、とまでは言ってないけれど(事実、性格の悪い姉妹は愛しつつ憎んでるし)、そういう人生の捉え方って大事だなぁ、と気が付かされたり。
ラスト。包帯を外せば、やっぱりみんな、怪我なんかしていなくて。包帯の中から鍵が出てきて脱出。。。。マリの目の包帯に鍵が入ってるんじゃないかなぁ、という予想は外れたけれど。扉の前で右往左往している人々をみていると、高校時代に教科書で読んだ、カフカの「掟の門前」を思い出す。あるいは、どこか映画「CUBE」っぽいなぁ、というのも感じた。中盤までは不条理劇をチラ見せしつつ、最後に不条理全開で、いろいろ考えさせるっていう落し方が、何とも心地よかった。
劇中、コロナ、という言葉は全く出てないけれど(「うんこディスタンス」っていう言葉は出てきたけれど(笑))、2021年の今、コロナの中で自分自身が見えなくなった人々とも、どこか重なって見えた。書を捨てよ街へ出よ、なんて事も、ふと頭を過ぎった。
気になった役者さん。「性格の悪い姉妹」の2人、廣田朱美と、ひらはらももゑ、二人だけ場違いなドレス姿で目立ってたのもあるけれど、とても印象的なやり取りだなぁ、と思って観ていた。