<観劇レポート>ワンツーワークス「29万の雫-ウイルスと闘う-」

#芝居,#ワンツーワークス

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 ワンツーワークス「29万の雫-ウイルスと闘う-」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名ワンツーワークス
ドキュメンタリー・シアター
29万の雫-ウイルスと闘う-
脚本古城十忍
演出古城十忍
日時場所2021/07/15(木)~2021/07/25(日)
赤坂RED/THEATER(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

ABOUT US『ワンツーワークス』は、古城十忍(こじょう・としのぶ)が主宰する劇団です。

ワンツーワークス

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

今から11年前の2010年、宮崎県下に「非常事態宣言」を発令させた家畜伝染病「口蹄疫ウイルス」の猛威。
本作は、その感染爆発に翻弄された関係者・約100人にインタビュー取材を行って得た証言だけで戯曲を構成。
その生々しい声は現在、世界を脅かし続けている「新型コロナウイルス」と闘う今の私たちの胸にも鋭く突き刺さる。
それほどまでに証言の数々は、ウイルスの不安や恐怖におびえ、また理不尽な行政の対策に憤りを隠さない。
これはかつて、宮崎県域でウイルスと闘った人々の切実な「心の叫び」の記録――。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年7月19日
19時00分〜
上演時間120分(途中休憩なし)
価格4800円 全席指定

チケット購入方法

カンフェティのサイトで購入、決済しました。
セブンイレブンで、予約番号を伝えてチケットを受け取ました。

客層・客席の様子

男女比は5:5くらい。様々な年代の人がいました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・シリアス
・考えさせる
・ドキュメンタリー

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

2010年、宮崎を襲った、家畜の疫病「口蹄疫」の被害と、その当事者の人々へ(おそらく)インタビューした内容をまとめた、ドキュメンタリータッチの作品。口蹄疫の発生から終息まで、牛や豚の家畜を殺処分しなければならなかった人々の証言。・・・そして、それを、2021年の今まさに起きている、コロナウイルスの蔓延の状況と、どこか連想させながら描く。

一つひとつのセリフが、(おそらく)インタビューから得られた実際の証言。出演者同士の会話ではなく、連続するモノローグを、立て続けに見ているような芝居。テアトロ2021年8月号に、早くも戯曲が掲載されていたが、パラパラめくるだけでも長ゼリフが延々と続く。真正面からやると退屈になってしまいそうな所を、古城十忍・・・ワンツーワークスの、いつもビートの効いた曲と、テンポのいい転換と展開で、次から次へと立て続けに見せていく。とても情報量が多い。

2010年のこの「口蹄疫」の問題、ここまで深刻なものとは、私は全く知らなかった。2010年当時は、どちらかというと東国原知事の動向ばかり気になっていたように思うし、殺処分現場のヘリコプターの映像を観ながら、豚肉の値段が高くなるんじゃないか・・・なんて、ずいぶんと牧歌的な事を心配をしていたのを、観ながらぼんやりと思い出す。その後、私自身2012年には単身赴任で九州に住んでいて、宮崎にも何度も行ったけれど、それでもこの問題を話題に聞いたり、身近に感じる事は無かった。

家畜を殺処分する事に対する、偽善・・・(結局は殺して食べているのだから)という批判にも、しっかりと向き合いつつ、しかしやはり、何の意味もなく家畜を大量に殺すのは、人間として耐えられるものではない。人々の悲痛な叫び。証言のみで構成されている演劇なので、グロテスクなシーンなんて全くないのだけれど、説明の中から浮かび上がる状況がとにかく生々しくて、重くて。それでも2時間あっというまだった。

「当事者」という事を考える。劇中何度か「実際に経験してみなければ分からない」という言葉が出てくる。私自身も、当事者でないからこそ、2010年の出来事を殆ど知らなかった。自分の事としては考えられなかった。・・・すべての事に対して「当事者」として考えるのは、難しい事なのかもしれないけれど。それでも、「当事者」と「部外者」の温度の差を、改めて感じずにはいられない。

あるいは「理不尽」の事。世の中には、人ひとりの力ではどうにもならない「理不尽」なことがあって、その「理不尽」を受け入れるしかない事がある、という辛さ。・・・最近の社会は、「理不尽なんてものは世の中には無い」というような風潮があると、個人的には感じているのだけれど(最近めっきり聞かなくなったけれど「自己責任」なんて言ったりもする)、それでは決して片付かない問題がある、という事。

そして今、コロナウイルスで、正に全世界が「当事者」になっている。「理不尽」にたくさんの人があえいでいる。宮崎で起こった事は、今世界で起こっている事の縮図。人々は口々に、あの時と同じ、と口にする。10年も早く、そんな事が日本で起こっていたなんて。。。自分の無知にあ然とするしかない、というのが本心だった。

最後まで観て、解決しなかった問題がある。作品として意図的かは分からないけれど・・・、2010年の「口蹄疫」の流行から今回のコロナの件を見た時、一体何を教訓にしておくべきだったのだろうか・・・という事が、実はよく分からなかった。冒頭「コロナは、口蹄疫の時と全くおんなじ。どうなるか全部わかってました。」的な言葉が出てくる。殺処分や理不尽を横に置いて、分かっていた事から出来た事は何だったのだろうか。細かい教訓を語る事が演劇の目的ではないから、その部分にはあまり触れなかったのかもしれないものの、個人的には、「当事者」を想像し、科学的に捉えて、何らかの前進や進歩をしたい。その事に対する言及が少なかったのが、少し残念だった。

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