<観劇レポート>ワンツーワークス「消滅寸前 (あるいは逃げ出すネズミ)」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 ワンツーワークス「消滅寸前 (あるいは逃げ出すネズミ)」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | ワンツーワークス |
回 | ワンツーワークス♯36 |
題 | 消滅寸前 (あるいは逃げ出すネズミ) |
脚本 | 古城十忍 |
演出 | 古城十忍 |
日時場所 | 2022/10/06(木)~2022/10/16(日) 赤坂RED/THEATER(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
『ワンツーワークス』は、古城十忍(こじょう・としのぶ)が主宰する劇団です。
古城十忍
こじょう・としのぶ/劇作家・演出家。「ワンツーワークス」主宰。宮崎県出身。
熊本日日新聞政治経済部記者を経て1986年、劇団一跡二跳を旗揚げ。
少年犯罪、不妊治療、在日差別、復讐の連鎖など、さまざまな社会問題をジャーナリスティックな視点から描いた作品を数多く発表。
2008年7月、『流れる庭-あるいは方舟-』の上演をもって一跡二跳を解散。
2009年、フレキシブルな演劇創造集団として「ワンツーワークス」を始動。
これまでの主な代表作に、『眠れる森の死体』『少女と老女のポルカ』『平面になる』『アジアン・エイリアン』『肉体改造クラブ・女子高校生版』『奇妙旅行』などがある。
2005年に文化庁新進芸術家派遣でロンドンおよびダンディ(スコットランド)に留学。
帰国後は実際のインタビューに基づいて「ドキュメンタリー・シアター」の上演にも精力的で、2007年には「自殺」をテーマにした日本初のオリジナル・ドキュメンタリー・シアター『誰も見たことのない場所』を発表している。
また、広島・鳥取・宮崎など、地方演劇人との交流にも力を注ぐ。
現在、(社)日本劇団協議会常務理事、新国立劇場演劇研修所講師。
過去の観劇
- 2024年07月19日【観劇メモ】ワンツーワークス「神[GOTT]」
- 2023年11月05日ワンツーワークス「アメリカの怒れる父」
- 2023年06月18日ワンツーワークス 「R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム」(2023年)
- 2023年02月20日ワンツーワークス「アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―」
- 2022年05月07日ワンツーワークス「民衆が敵」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
ふるさとの町がなくなってしまう!?
「消滅か? 存続か?」 人生を懸けた採決の時が訪れる日本のどこか。どこかの、目に見えて過疎化が進む中山間地域。
この地区では住民による行政サービス代行が始まって数年が経つ。
しかし、人口増加を目指して次々と事業に打って出るものの人口減少に歯止めはかからない。
同時に、代行の担い手である住民組織の委員たちもまた、難しい局面に立たされていた。
母の介護に追われる者。息子の進学に合わせて引っ越しを考える者。地区一番の農地を持ちながら周辺土地が荒れ放題となり困り果てている者。
もはや猶予はない。住民組織の面々はついに人生を懸けた重大な結論を下すことを迫られる。
議題はたった一つ。「この先、我らがふるさとを存続させるのか、それとも消滅させるのか」
果たして、その採決の結果はどうなるのか……?
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2022年10月8日 19時00分〜 |
チーム | マウスチーム |
上演時間 | 130分(途中休憩なし) |
価格 | 4800円 全席指定 |
チケット購入方法
カンフェティで予約・決済しました。
セブンイレブンでバーコードを見せて発券しました。
席は選択できませんでした。
客層・客席の様子
男女比は5:5。様々な年代層の客がいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・シリアス
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
ワンツーワークス「消滅寸前 (あるいは逃げ出すネズミ)」130分休無
再演らしい。面白かった!実は最初から何も解決してないし、ラストからも村の話はある種の比喩でしかないんだけど。事態の捕らえ方だけで変わるものかなぁ、なんて事を思う。ラスト、少し歯切れ悪くてむしろ納得。超オススメ! pic.twitter.com/eLaJM3M82y— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) October 7, 2022
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
再演との事だが、作品初見。ストーリーは、事前紹介の通り。過疎が進む村(?)。このままだと、いずれは限界集落になり、そしていずれは集落そのものが消滅してしまう。自治体から出ている補助金をどのように使うかを考える、地域の委員達のお話。ここ10年くらい、Uターン・Iターン誘致など様々なPRをしているも、効果は出ていない。2021年。今どうすべきかを、委員達が投票で決める。その投票の中で、それまで10年を振り返る。村の行く末を、海を行く船旅に例えつつ、しかし何処にいるかもわからず、どこに向かうかも分からない。そんな「船員たち」のシーンを、村の様子の例え話として交えて描く作品。
人口が減る…という事を真っ向から捉えた作品。作品を最後まで観ても、問題は何も解決していないし、展開すらしていない。「人口が減る」という事が、一体何を招くのか、という事を語っている作品に見える。「人口が減ると・・・」という事を、ただ語っても、中々実感できないのが私たち人間のサガ。実際、国力が徐々に衰える・・・と言われても、どこか他人事でピンとこないのが、私も含めて、殆どの人の実感なのだろうと思う。作品では、過疎が進む村をその人間関係も含めて詳細に描きつつ、しかし「村の過疎」というのは一つの大きなメタファーで、日本という国の「人口減少」を、考えやすいサイズに切り出して提示しているように見えてくる。ラストのシーンで、「日の丸」をあえて掲げた船を提示しているのは、「村」の話ではなくて「日本」という国の話をしているから、なのだろうと思う。
劇中、おそらくあえて話題にするのを避けてあくまで「村の人」の視点に留めていることとして、「人口が減る原因」のは「近代以降の人間社会が、成長を前提として作られているから」というのがあるように思う。ラストに出てきた方向性「新しく来る人のためにお金を使う」のではなくて「今いる人のためにお金を使う」というのは、ある種「成長」の否定にも思える。主張には納得もするし、この「村」の方向性としては賛成もするのだけれど、村を「日本」のメタファーだと考えると、そんなに簡単に割り切れるのかな・・・なんて事を考えてしまう。今回の演劇のように、小さく切って口に入れてもらってはじめて問題の味をかみしめるような問題なんだから、そもそも、どうする、なんていう解決策は、ないのかもしれない。ラスト、意図的に「歯切れの悪さ」を含ませているように感じて、その後味の悪さに、そんな解決策の無い問題について考えた。
今回も好んで、アフターイベント「公開ダメだし」の回に観劇。ちょうど「2日目落ち」だったのか(メインキャストは、ゲネも含めると5ステ目・・・と話していたけれど)、セリフを噛んでいるところが初見の私にも目立って見た。ダメだし、古城十忍がとにかく「噛むな」と指摘して、・・・セリフの間違いを指摘される役者を見て、観る側としてて面白く、会場の笑いを誘っていた。とはいえ「噛む」話はそこそこに、もう少し「このニュアンスの台詞は、テーマと合ってない」みたいなのを聞きたいな、とも思う。・・・まぁそそもダメ出しに、何かを期待するは変だとは思いつつ、過去と比較して、そんな事を思ってしまう。