【観劇レポート】桃尻犬「グロリアストラベル」
【ネタバレ分離】 桃尻犬「グロリアストラベル」の観劇メモです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 桃尻犬 |
題 | グロリアストラベル |
脚本 | 野田慈伸 |
演出 | 野田慈伸 |
日時場所 | 2025/07/16(水)~2025/07/20(日) 浅草九劇(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
桃尻犬 momoziriken は演劇などをする団体です。
2009年立ち上げ。メンバーは作・演出の野田慈伸だけ。
人間の悪意や杜撰さ、どうしようもなさ。人生のくだらなさ、つらさ、どうしようもなさ。それらをポップに楽しく、HAPPYに描く。
人は人生にどうあっても立ち向かわないといけないが、キレイにまっすぐ立つことだけがその限りではない。
作、演出の野田慈伸は俳優としても、とても活躍中。
過去の観劇
- 2023年06月25日桃尻犬 「瀬戸内の小さな蟲使い」
- 2021年09月04日桃尻犬「ルシオラ、来る塩田」
- 2020年02月06日桃尻犬「ゴールドマックス、ハカナ町」
- 2019年06月27日桃尻犬「山兄妹の夢」
- 2019年01月17日桃尻犬「俺ずっと光ってるボーイ、健之助」大声と感情の肉弾戦の迫力がすごい ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
誰かが死んじゃう前に、旅に出よう
その先に何かあるんじゃないかと、
旅をする家族の話。
この旅がどうか栄光へと続く道でありますように。
どうか。ホントに。お願いだから。悲惨すぎる日常を明るく楽しく描きたいと思います
野田慈伸
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2025年07月16日 19時00分〜 |
上演時間 | 90分(途中休憩なし) |
価格 | 4000円 全席自由 前半割 |
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
「青森こどもパン祭り」出店に向かうパン屋一行の移動の車内。パン屋の主人と妻はケンカしていて、娘は離婚するんじゃないかと泣いていて、同じくパン屋で働く主人の父は困っている。別の車の従業員男女は、どうせ潰れるならと一緒にパン屋をやろうどうせならつきあおう、などと話している。どういう訳かサービスエリアで置いていかれたパン屋のホール担当従業員は、親切な人に青森に連れて行ってもらうが・・・高速道路なのに渋滞で先に進まない。夫婦喧嘩が爆発してやはり離婚話に。悲しみに満ちた娘の感情が爆発して、そこは本当に「地獄」になっていく話。
前半の、2台の車の車内とサービスエリアの会話がとても緻密。前作の「瀬戸内の小さな蟲使い」ではフリーホールの頂上に取り残された面々だったが、今回は夫婦喧嘩中の車内。パン屋一行のシチュエーションや「青森こどもパン祭り」は観客の誰にとっても馴染める設定ではないものの、夫婦げんかの状況としては誰もがどこが覚えのあるような状況。でももう後戻りできないくらいまでになってしまっている。これが緻密で嘘が無くて、でもかなりシチュエーションコメディ的な笑いがある。夫婦喧嘩の描写というのもあり、あまりいい気分にはならないのだけれど、笑いつつも深刻なシチュエーションに目が離せなくなる。
音楽もほとんどなく、舞台セットもシンプル。気が付くと緻密な会話劇。ただこれまでの桃尻犬を考えると、後半は変なところに堕としてくるのかな?と期待していると。・・・気が付けば、娘が扉を開いた地獄絵図。全く論理的な展開ではないものの、やっぱり来たな桃尻犬、という感覚。野田慈伸がどこか気弱な鬼として登場し、伏線回収的なエピソードをまき散らしつつも、気が付くと家族でパン生地をこねている。
家族の再生。娘の成長。娘が親を乗り越えていく様。物語の帰結をを冷静に考えると、どこかで見たことがあるような物語、ではある。そんな物語は沢山観てきたような気がする。でも桃尻犬にかかると、ありきたりな物語が、唐突な地獄絵図の展開と共に、ありきたりではなくなっている不思議。あるいは、テーマ的なものを隠す「照れ隠し」にも見える。気が付くと術中にはまっている。
前半が、かなり緻密な会話劇・シチュエーションコメディだったが故に、ラスト突然、高速道路の渋滞の車が地獄に落ちていくのは唖然とせずにはいいられなかったが。ラスト、娘が本当にパン生地をこねる様子が、やはりシンプルな描写なのに心に響いてくる。観終わって初めて時計をみると90分。あれまだ90分しか経って無いのか。濃密な会話劇と、どんでん返しと、家族の物語。見事な90分だった。
家族の三人。佐野剛、加納和可子、小笠原遊香、が印象的。特に小笠原遊香の大声と、佐野剛、加納和可子が全く同じセリフで展開される場面を「喧嘩している二人」と「ラブラブな二人」のシチュエーションで演じるのが印象に残り。