<観劇レポート>桃尻犬「ルシオラ、来る塩田」

#芝居,#桃尻犬

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 桃尻犬「ルシオラ、来る塩田」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名桃尻犬
MITAKA“Next”Selection 22nd
ルシオラ、来る塩田
脚本野田慈伸
演出野田慈伸
日時場所2021/09/03(金)~2021/09/12(日)
三鷹市芸術文化センター星のホール(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

桃尻犬 momoziriken は演劇などをする団体です。
2009年立ち上げ。メンバーは作・演出の野田慈伸だけ。
人間の悪意や杜撰さ、どうしようもなさ。人生のくだらなさ、つらさ、どうしようもなさ。それらをポップに楽しく、HAPPYに描く。
人は人生にどうあっても立ち向かわないといけないが、キレイにまっすぐ立つことだけがその限りではない。
作、演出の野田慈伸は俳優としても、とても活躍中。

桃尻犬

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

どうやら隣の水は甘そうだ。

10年前にコンビニに煙草を買いに行ったまま帰ってこない母親においていかれた兄妹は、いつしか兄が妹を殴りはじめ、妹も何となく嫌だなぁとは思いつつあまり強くはでられない関係になっていた!隣のカナちゃんちは日曜日のお昼にはお庭でお肉を焼いているというのに!

捨てられた兄妹とそれを助けたり、助けられたり、ただ一緒にいたりする人たちの、隣をうらやむ羨望のお話。

みんながみんな隣の芝生を覗いてる!

夏なので、ホタルの話にしようかと思っています。
隣の水は甘いぞ甘いぞと思って、隣の水を飲みに行ったら大して甘くなく、甘い水を探し続けるお話はどうかなと。
できれば、羨んだり妬んだりしないで生きていきたいものですが、なかなか全然です。自分もすぐ歯茎が割れるほど人のことをいいなーと思ったり嫉妬にまみれて狂い死にしそうになります。
どうしようもなくてかわいい人しか多分出てきません。
うるさく、元気がいいお芝居にしたいとは思っています。 
野田慈伸

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年9月4日
19時00分〜
上演時間95分(途中休憩なし)
価格2500円 全席自由

チケット購入方法

三鷹市スポーツと文化財団チケット販売インターネットサービスで予約しました。
当日、現金でお金を支払い、整理番号付きの券を受け取りました。

客層・客席の様子

男女比は6:4くらい。
40代upが割と多いも、その中に若い人も目立つ客席でした。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・会話劇
・笑える
・シンプル

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

桃尻犬。独特の世界観が好きで観ている劇団。観るのは4作目にして、MITAKA“Next”Selectionに。有名になる前にギリギリ知れたかな、という感覚。三鷹に出るのは嬉しいけれど、割とニッチな嗜好の感覚が強いので、MITAKA“Next”Selection狙いで来ているお客さんがいたら、どう受け止めるのかな…みたいな、とても身勝手な心配をしつつ観劇。

閉塞した田舎町で、「コンビニにたばこ買いに行ってくる」と告げたまま母に捨てられた兄妹。遠い親戚の牧場で育てられて、18歳に。兄の過剰なまでの愛情を断ってなんとか自立しようとしつつも、自立しようとするその事で、周囲の愛情や優しさに気が付き、確かめていく話・・・と書くと、とてもいい話のように思えるし、実際いい話なんだけれど、言葉はぶっきら棒、セリフの各所に若くて軽い感覚が随所に織り込まれていて、ストレートな表現をストレートには見せない。どこか巧妙でもあるし、どこか照れ隠しのようにも見える。・・・兄妹の愛情・絆は、何にも代えがたい・・・ってストレートに言うとものすごく恥ずかしい部分もあるけれど、そういう恥ずかしさを飛び越えるような巧妙さ。指ではねるとどこかすぐに崩れてしまいそうな、妙なバランスの上に立つ芝居。この感覚はすごく好きだ。

2/3くらいまで観た所で。むしろストレートさが隠し切れず目立っているのに気付いて、ずいぶんとウエルメイドな話を持ってきたなぁ、と感じるようになる。このまま、いい話でした、で終わらすのか?と思ったら…。兄妹を捨てたブッ飛んだ母が現れて展開するのかと思いきや・・・、仲良くしていた隣人に殺人鬼が混じっていて、殆どみんな殺されちゃう。直前の誕生会で儚い絆を確かめあったにもかかわらず、殆ど死んでしまう。兄妹は、母に捨てられた時以上のピンチに遭遇する…というのを示唆したところで物語は終わる。でも不思議と「この兄妹は、何があっても大丈夫」という感覚しかない。最後のサプライズ的な皆殺しでも、やっぱり描いているのは兄妹の絆。若干猟奇的なシーンが続くのに、妙な安心感、ストーリーの軸はブラさない上での、どんでん返し。前半のウエルメイドな展開を、サプライズが補強してみせるのが、何とも痛快で、心地よかった。

ラストの皆殺しのシーン。ふと話題になった、サプライズニンジャ理論を思い出す。

「あるシーンで突然ニンジャが現れて、全員と戦い始める方が面白くなるようであれば、それは十分によいシーンとは言えない」

この場合、殺人鬼が出てきて皆殺しにした方が面白くなる、という逆手のサプライズニンジャ理論の好例にも思えた。

これまでの作品でも、2人の会話シーンが多かった。小さな小屋で観ている時は、特に疑問を持たなかったけれど。三鷹、星のホールの舞台は、間口が広い(横に長い)。どうしても、空間を持て余していたかな、と感じる。この作品も、OFF OFFシアターかシアター711とか、こじんまりとした小屋で観たかったかも、というのが本心。技量というより、桃尻犬の作品・作風の特徴のような気もする。MITAKA“Next”Selectionを三鷹以外でやる訳にもいかないだろうから、これはある意味致し方ないのかなぁ。ガラリと作風を変えてくるでもしない限り、難しい気もする。

舞台#芝居,#桃尻犬