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<映画レポート>「哀愁しんでれら」

#映画

【ネタバレ分離】昨日観た映画、「哀愁しんでれら」の鑑賞レポートです。

映画基本情報

タイトル

「哀愁しんでれら」

2021年製作/114分/G/日本/配給:クロックワークス

キャスト

福浦小春:土屋太鳳/泉澤大悟:田中圭/泉澤ヒカリ:COCO/福浦千夏:山田杏奈/ティーチャ/安藤輪子/金澤美穂/中村靖日/亀岡:正名僕蔵/泉澤美智代:銀粉蝶/福浦正秋:石橋凌

スタッフ

監督: 渡部亮平 /脚本:渡部亮平/製作:中西一雄/共同製作:藤本款,小泉裕幸,根本浩史,久保田修,吉川英作/プロデューサー:浅野由香,涌田秀幸/協力プロデューサー:山本晃久/撮影監督:吉田明義/照明:浦田寛幸/録音:根本飛鳥/美術:矢内京子/装飾:岩本智弘/衣装:境野未希/へアメイク:外丸愛/小道具:鶴岡久美/編集:岩間徳裕/音楽:フジモトヨシタカ/VFXスーパーバイザー:小坂一順/リレコーディングミキサー:浅梨なおこ/サウンドデザイン:大保達哉/カラリスト:石山将弘,芳賀脩/助監督:水波圭太,川井隼人/アソシエイトプロデュ一サー:遠藤里紗/制作担当:阿部史嗣

公式サイト

哀愁しんでれら
(公開後、一定期間でリンク切れの可能性あり)

映画.comリンク

作品解説

土屋太鳳が主演を務め、幸せを追い求める真面目な女性が社会を震撼させる凶悪事件を起こす姿を描いたサスペンス。「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016」でグランプリを獲得した企画をもとに、「かしこい狗は、吠えずに笑う」の渡部亮平監督がオリジナル脚本で映画化した。

あらすじ

市役所に勤める小春は平凡な毎日を送っていたが、ある夜、不幸に見舞われ全てを失ってしまう。人生を諦めかけた彼女の前に、8歳の娘を男手ひとつで育てる開業医・大悟が現れる。優しく裕福で王子様のような大悟に惹かれた小春は、彼のプロポーズを受け入れ、不幸のどん底から一気に幸せの絶頂へと駆け上がるが……。

満足度

★★★★★
★★★★★

(4.0/5.0点満点)

鑑賞直後のtweet

ここから先はネタバレあり。注意してください。

感想(ネタバレあり)

いろんな個所に考えが飛ぶ話だった。複雑な話では全くないのに、作者の頭の中を覗いてみたいというか、答え合わせをしてたなるような感覚だった。人間の二面性というか、怖さというか、そういう事を、サラッと2時間で語っている感覚。物語で語っている事とは別の事を、思わず考えてしまった。

前半部分は、シンデレラストーリー。不幸のどん底まで堕ちたかと思えば、棚からボタモチってこの事言うのか、なくらいのハッピー・シンデレラ。ただ、映画の予告編で見てしまったからか、このまま幸福が続くわけないよね、というのは分かる。子供の懐き具合も、あまりにも調子が良すぎるし、セックスの相性が悪かったりして…とか悪魔な思考も、ちょっとロマンチックなベッドシーンで完全に塞いでくる。完璧なシンデレラの中に、所々、解せないカットが出てくる。伏線…というには、あまりにもこれ見よがしなので、暗示して、明確に意識させているような感覚。

50分位から始まる「相手を理解出来ない」の疑心暗鬼の連鎖。人間の二面性が明らかになる部分。ただ、絶妙なのは「理解できるような気もするけれど、やっぱり理解するのが大変そう」という、絶妙な真実の発見が配置されている事。自分のヌードのデッサンを、毎年一回描いて飾っているっていうのは、「まぁ、そういう事もあるのかな」という感覚と「純粋に気持ち悪い」というのの真ん中くらい。飼ってたうさぎのはく製もしかり。小春の友人が語る「シンデレラって、怖い。靴しか合わないのに結婚相手決めるって怖い」っていう言葉が、ひしひしと蘇ってくる。結婚前に嫌な奴に見えた義母は、むしろ常識的な人間に見えてきたりもする。

そして、娘ヒカリの変化。気が付けば、幼い頃の小春の母が、自分を捨てて出て行ったのと同じことをしている。子を捨てる要素は、DNAに刻まれていて過ちは繰り返す…、みたいな単純な事を言おうとしている訳ではなくて。母が何故、小春を捨てたのかは、相変わらず分からない。けれど、人間の別の面って他人からは見えなくて。そういうものだ、それが自然だ、という状況を、小春が理解できない事そのものを、見せている感覚。主人公が観ているものと、客が見ているものが、同じものを見ているのに、意図して少しズレさせている。そんな風に思える。

このまま踏切で死んでしまうのかな、と思ったら、その後の展開がまた異色。ここから先の流れって、実は小春の想像というか、相手の2面性を受け入れた場合の怖さ、みたいな部分でもある。いろんな解釈は出来るものの、自分的には「アナザーストーリー」なんじゃないかな、と思った。踏切で死んでしまった、あるいは自殺は思い留まったとしても、大悟とは別れていく人生があって、その人生とは別のストーリー。要は、相手の二面性に思考停止して、相手の思うがままを無批判に受け入れる事で、行きつくところまで行ってしまった悲劇の世界での物語。終演後、宣伝文句を見たら「なぜこの真面目な女性は、社会を震撼させる凶悪事件を起こしたのか。」って書いてあるんだけれど、もし自分の感覚を放棄したら、こうなるぞ、という意味合いでの凶悪事件、という風にも思えた。

ラスト、インスリンの伏線も回収しながらの大量殺人。ただ、周りの生徒を殺す、という部分は、冒頭から繰り返される伏線には無かったように思う。その意味でちょっと意外な結末だったけれど。無意識に相手の価値観を受け入れたり、無意識に子供のいう事を信じようとしてしまったり、そんな時に「相手を殺す」という衝動を抑えられるのか。そんな事を思いながら見ていた。

心象風景の描き方がとても良い。初めて大悟とファミレスでデートする時と、葬式の帰りのヒカリと立ち寄ったファミレスっぽいレストラン。背もたれの高さが違う。あれ、意図的にああいう場所を探したのかな、とも思った。

土屋太鳳の、相手に翻弄される部分、田中圭の、優し過ぎて実は怖い感覚、COCOの、表情。三人の親子像がどれもとても印象的。山田杏奈の女子高生役を、ここ何作か立て続けに見ているけれど、何だかとても自然で、いて欲しい女子高生像が板に付いているなぁ、というのを感じ。

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