<観劇レポート>KAAT神奈川芸術劇場『音楽劇「銀河鉄道の夜2020」』

#芝居,#KAAT,#白井晃

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、KAAT神奈川芸術劇場 「音楽劇「銀河鉄道の夜2020」」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
音楽劇「銀河鉄道の夜2020」
脚本能祖將夫
演出白井晃
日時場所2020/09/20(日)~2020/10/04(日)
神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

CoRich 公演URL

団体の紹介

神奈川芸術劇場。横浜の山下公園近くにある劇場です。

ミッション
「3つのつくる」をテーマとする創造型劇場
【モノをつくる 芸術の創造】
演劇、ミュージカル、ダンス等の舞台芸術作品を創造し、発信します。県民の財産となるようなオリジナル作品を創造し、次代に引き継ぎます。
【人をつくる 人材の育成】
舞台技術者、アートマネージメント人材など文化芸術人材を育成します。より良い作品創りのために、劇場スタッフが施設利用者をサポートします。
【まちをつくる 賑わいの創出】
公演事業の積極展開、創造人材の交流及びNHK横浜放送会館を始めとした近隣施設との連携により、賑わいや新たな魅力を創出し、地域の価値を高めます。

KAAT神奈川芸術劇場

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

「お父さんからラッコの上着がくるよ」、少年ジョバンニは今日もクラスメートのザネリにからかわれていた。 遠い外国の海に漁に出たまま戻ってこない父に、ラッコの密猟をして逮捕されたという悪い噂が立っていたの だ。今日は星祭りの夜、耐えられなくなったジョバンニは町外れの丘に登り、一人星空を見つめる。すると汽車 の音が聞こえ、気がつけば客車の中、目の前には親友のカムパネルラもいて。銀河のほとりを走るその汽車は、 実は死者の魂を天上へと運ぶ汽車であった。途中で乗り降りする奇妙な人々。二人は「ほんとうの幸い」を探して、どこまでもどこまでも一緒に進んで行こうと決意するのだが・・・。

観劇のきっかけ

最近「銀河鉄道の夜」という作品によく出会う事と、神奈川芸術劇場プロデュースで白井晃演出だから、の観劇です。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2020年9月20日
14時00分〜
上演時間130分(休憩20分を含む)
価格A席5000円 全席指定

チケット購入方法

「チケットかながわ」というサイトで購入しました。
セブンイレブンで、チケットを発券してもらいました。
その際、クレジットカード決済を利用しました。

客層・客席の様子

男女比は3:7くらい。女性は若年層~ミドル層、男性は様々な年齢層でした。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・宮沢賢治
・幻想的
・考えさせる

観た直後のtweet

映像化の情報

情報はありません。

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

昨年観た「ギンテツ」、映画「幕が上がる」、甲府南高校の「イノセント鉄道とぼく」などなど、私の興味を持つ作品に、ここのところ頻出にモチーフとして遭遇する作品、「銀河鉄道の夜」。KAATで白井晃が演出で、音楽劇とあれば、観にいかない選択肢は私には無い。いそいそと初日に観劇。

ストーリーは、有名なので割愛するとして。・・・なによりもまず、空間の作り方が幻想的。青や緑を基調にした照明。色あい的には、私の大好きなミュージカル「ウィキッド」を思わせるような空間。KAATの舞台の奥行まで広く使って、どこともつかない銀河鉄道の世界を表現。3階席からの観劇だったが、むしろ照明効果が非常によく見える位置での観劇で、好都合なポジション。下手にオーケストラピットを配しての、生演奏ミュージカル。銀河の中を駆け抜けているにもかかわらず、どこか深く深く沈んでいくような感覚の演奏。空間としてのインパクトが強く、没入感がとても深かった。

もともと「銀河鉄道の夜」は、前半は、少し退屈な部分があるお話だと思ってる。今回も同様、前半は話の進み方がちょっと退屈。後半から乗って来る感覚は共通。今回の音楽劇では、2幕から。展開がとても美しくて惹きつけられる。また、物語が目まぐるしく動く。タイタニック号の描写は、ここまで鮮明にみせられると、死に瀕した時の人の営みとして迫って考える部分もあり。

今回の音楽劇は、「銀河鉄道の夜」の解釈として、どこかカムパネルラの視点に寄っているように感じる。「自分の生に意味があったのだろうか」という問いかけ、カムパネルラ自身の生の充実に対する疑問を軸に解釈されていて、最終的には、ザネリを助けるために犠牲になったカムパネルラの行動に帰結していく。パンフレットの白井晃の挨拶にも「まことのみんなの幸いとは何か?」に対する考察が書かれている。

これまでに観た「銀河鉄道の夜」あるいは、そのオマージュの作品だと、どちらかという、とジョバンニの心の動きが物語の軸であり、中心だった。ジョバンニが、カムパネルラの死という理不尽に遭遇して、その「どうしようもない現実をいかに受け入れていくか」という点に焦点を当てた解釈が多かったように思う。今回の作品、物語として、何かが大きく変わったという訳ではなく、どこに視点を置くかのわずかな差でしかないのだけれど、明らかに、カムパネルラの生に対する視点に重心が置かれていたように思う。

実はこの視点は、ちょっと意外だった。今までの作品では、カムパネルラは、得体の分からない不思議な人、的な描かれ方をしていた。しかし、軸を変えて解釈するなら、カムパネルラがもう少し主体的に物語を回していかないと、ラストのシーンがうまく解釈出来ないなぁ、腑に落ちないなぁ、という思いもうまれる。その点では、んー、カムパネルラの悩みって何なのだろう、と真っ向から考える点に、ちょっとした消化不良感も残った。

元々の作品は、25年前、青山劇場の10周年の記念作品として制作されたもの、との事。解釈の差は、時代の変化なのか、単純にこの音楽劇だけ解釈が違うのか。その点までは判然とせず。以前は全く理解できなかった「銀河鉄道の夜」の面白さが、最近、少し分かってきたような気分になっていただけに、新しい解釈は意外でもあった。

また、これは好みかもしれないが・・・、全編で舞台上で妖精のように歌っている、さねよしいさ子の声質は、作品の雰囲気にあまりマッチしていなかったように感じたのも気になった。初めて聞く歌手の方だけれど、私には、おおたか静流を思い起こさせる歌声。異国情緒というか、エスニックな感覚が強く、「銀河鉄道の夜」のどこともわからない日常に、深く沈んでいくものには、少し違うんじゃないかなぁ・・・という点を思った。好みもあるから、仕方のないところかもしれないけれども。アンサンブルの合唱の方が、雰囲気にマッチしていたのではないか、という思いを抱いた。

なんにしても。「銀河鉄道の夜」を、幻想的な空間として楽しめたのは良かった。


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