<観劇レポート>キ上の空論 「けむりの肌に」
【ネタバレ分離】 キ上の空論「けむりの肌に」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | キ上の空論 |
回 | キ上の空論 #18 |
題 | けむりの肌に |
脚本 | 中島庸介(キ上の空論) |
演出 | 中島庸介(キ上の空論) |
日時場所 | 2023/04/07(金)~2023/04/16(日) CBGKシブゲキ!!(東京都) |
団体の紹介
公演HPにこんな記載がありました。
2013年12月旗揚げ。中島庸介の舞台芸術を創造する場。言葉遊びや韻踏み、擬音の羅列や呼吸の強弱、若者言葉や方言など、会話から不意に生まれる特有のリズム〈音楽的言語〉を手法に『ありそうでなさそうな日常』を綴る。
過去の観劇
- 2024年03月28日【観劇メモ】キ上の空論 「けもののおとこ」
- 2023年07月12日キ上の空論「幾度の群青に溺れ」
- 2022年04月15日キ上の空論「朱の人」
- 2021年02月09日オフィス上の空 /キ上の空論「ピーチオンザビーチノーエスケープ」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
『澄乃が死んだ…』
久々の電話で理人が言った。 自殺らしい。
それで、僕らは集まる事になった。
広田理人と長谷部サラサ。 僕らは学生時代、よく4人でいた。
あの頃は何をしてたっけ? 少し思い出してみる。
澄乃と過ごした… ぼんやりした風景も… 何気ない会話とか…しばらく会ってなかったら、もう二度と会えなくなった。
「こんな事なら、電話くらいしてやれば良かった…」
僕は澄乃の事が苦手で、大人になって全然会わなくなったけど、
僕は、今やっと、久々に、あの子の事を想ったりする。あの子が死んでからの、残された人らの、その後の話です。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2023年04月12日 19時00分〜 |
上演時間 | 115分(途中休憩なし) |
価格 | 7500円 全席指定 |
観た直後のtweet
キ上の空論「けむりの肌に」115分休無
よかった。軽やかだけどずっしり重い。この掻きむしるような切なさに既視感あるなぁと考えてて、村上春樹「ノルウェイの森」を初めて読んだ時の、あの感覚と同じだと気づく。いろんな捉え方ありそうな物語だけど、私には青春の終わりの物語、にみえ。超オススメ。 pic.twitter.com/kUBMeII9h0— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) April 12, 2023
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想メモ(ネタバレあり)
※文章書くのが不調で、しっかり書き上げる余裕が取れないため、当面は感想のメモだけ残しています。後々振り返って、もう少しちゃんとした文章に仕立てあげるかもしれません。
売れてないけれど、もう少しで目が出そうな俳優の、僕。若い頃は戦隊モノのヒーローとかやっていたのに、今では「キモい」オタクの役とか回ってこない。そんな中、大学時代の友達、澄乃が死んだ。死ぬ直前に電話がかかってきていたけれど、僕は邪な事に夢中で、出られなかった。出ていたらどうなっていただろう。そんな後悔の中。過去の記憶が紐解かれる。
面白い。ずっしりと重い「重し」を、2時間のお話でゆっくりと時間をかけて頭に乗っけられたような感覚。会話がとにかく、スパスパと切れるように鋭い。登場人物が多くて、過去から現在から、いろんな場面が出てくるのに、スパッと切り替わりが分かる。舞台セットは抽象的で割とシンプルな会話劇なのだけれど、濃厚な時間が流れる。細かい会話のすれ違いとかがリアル。
僕が最後に澄乃に会った、澄乃の個展のシーンの回想が、一度だけ出てくるのだけれど。唐突に始まる(場面が変わったので)不自然な会話が、「あ、これ個展のシーンじゃない?」っていうのが何の説明もなく分かる。あの切替が最も見事だった。
お話の背後に流れる、どうしようもなく甘酸っぱくて切なくて、胸をかきむしりたくなるような感覚。途中から、何だか見覚えあるなぁなんて事を思う。必死に考えてたどり着いたのが、村上春樹の「ノルウェイの森」を最初に読んだ時の感覚。高校時代かな。人を愛する事と、自分の「青春」時代への決別。決別後の「空虚」さ。ノルウェイだと、直子の死と、その先に見えるどこまでも空虚な空間。澄乃の死を通して見えてくる、切なさと、空虚さと。
ラストは「ノルウェイの森」同様、ルフトハンザの機内で泣くような、そんな予想をしてた。冒頭のたばこのシーンを、時を経てリフレインしながらの涙が印象的。会社の上司の、妹を亡くした話とのシンクロが見事。
Twitterで感想を探ると、「全通」しているような見方をしているツイートを見かける。要は「俳優を推す」タイプの人が、多く観ている感覚。キ上の空論を、小劇場と呼ぶのはそろそろ無理があるかもしないけれど、演劇・小劇場を観る客層とはちょっと異なる客席の雰囲気。でも、内容は狂おしいほどにストレートな会話の演劇。このアンバランスさがたまらない。演劇のファンの幅を広げつつ、もっとメジャーになって欲しい団体。