<観劇レポート>やみ・あがりシアター「すずめのなみだだん!」

#芝居,#やみ・あがりシアター

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 やみ・あがりシアター「すずめのなみだだん!」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名やみ・あがりシアター
やみ・あがりシアター10周年記念公演
すずめのなみだだん!
脚本笠浦静花
演出笠浦静花
日時場所2023/01/06(金)~2023/01/08(日)
駅前劇場(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

2012年に旗揚げ。
「ヒトのやんでるところとあがってるところを両方、病気が治ったばかりのようなハイテンションでお届けしたい」
というコンセプトのもとに芝居作りを行う。

やみ・あがりシアター

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

だだん!!!!もんだい! どうしてすーちゃんは、ハダシなのでしょうか!

答え:足の裏を地面につけておくのが、彼女の戒律だからです。すーちゃんは学校に
通うのも初めてなんですから、皆さん親切にしましょうね。

でもね、すーちゃん、
君の足の下に神の世界はなくて、実は地球は丸いってこと、
だんだん分かってしまうんだよ。

2017年夏初演。
やみ・あがりシアター10周年記念として行った、
お客様からの再演希望アンケートにて1位をとった人気作、真冬に再演決定!

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2023年1月6日
15時00分〜
上演時間105分(途中休憩なし)
価格3800円 前売り 全席自由

チケット購入方法

CoRichのホームで予約しました。
当日受付で、現金でお金を支払いました。

客層・客席の様子

男女比は6:4くらいで、男性が少し多め。
様々な年代の客がいました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・群像劇
・ハッピー
・考えさせる

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

2023年の観劇初めは、やみ・あがりシアターから。10周年記念公演で、一般投票で選ばれた過去作品を、はじめて「再演」をするという。私自身、もう長い事観続けている印象の、やみ・あがりシアターだけど、この作品の初演、第9回公演はまだ観てなくて、作品初見。個人的には「こっちみてるの、しょうこ」を再演して欲しかったけれど、作品の持つ勢いとかを考えると、こちらの方がふさわしいだろうなぁ。ものすごく力強い、そして演劇としても面白い作品だった。

「だだん!」と裸足で地面を踏み鳴らして、地面からの「声」を聴くことで人生を決めていく、山奥の集落にある宗教(=「だだん信仰」…とか言ってたような曖昧な記憶)。そこから「布教活動」に、集落外の「外の世界」に出かけた女性二人。しかし出かけた直後、山は土砂崩れで埋まってしまい、集落は消え、帰る場所を失った。別々の生活をはじめた二人。靴屋に身元引受人になってもらったすーちゃんは、定時制学校に通いながら、「だだん!」以外の世界を徐々に知っていく。もう一人の女性は、足裏マッサージで働く。どうやらこの女性は、集落にいた時に、インターネットを使って「外」の世界から買い物をしていたらしく、外を知るが故に集落から出た真意は「逃げ出してきた」らしい。集落から出たふたりの女性と、靴屋さん、役所の人、定時制学校の生徒たちの人生模様を群像劇として描きながら、「信じる」ことと「真実」とを描く群像劇・・・と、かなりはしょって強引にまとめると、こんなお話。

ストーリーを書き下してみても、文章が長いわりに、観た事を全然書けてないなぁという感覚。群像劇としての完成度が高すぎるし、それぞれのキャラクターが重すぎる。なので、一つ一つの事を書き出すと、とても長くなってしまう。俯瞰すると、「(新興)宗教から」逃げてきた人の物語・・・とも言えなくもないけれど、そんなに単純な話でも無い。Twitterに流れる感想が、「おもしろい!」以外、てんでバラバラな賛辞で、要は観る人によって、ものすごく多面な要素を持つ作品だろうなぁ・・・という感覚。冒頭、集落の描き方は、ちょっとダンスっぽくて、これが2時間続いたらちょっと辛いかもなぁ・・・なんて事が頭をよぎったけれど。集落から抜け出すと、とてもテンポのいい、むしろエンタメな芝居。エンタメなのに、語っている事が深い。2度3度観て、いろいろと確認したいのが本音だけれど、駅前劇場なのに、6ステしかないのが勿体ない。(映像になったら、買いそうだなぁ)

物語を通して、根幹として描かれているのが、「信じる事」・・・広い意味での「信仰」に対するそれぞれの、捉え方考え方の違い。宗教から抜けてきた「すーちゃん」は、地面は平だと信じていて、「だだん!」以外から何かを教わることがタブー・・・劇中の言葉だと「軽みある」だと思っている。でも、定時制の学校で学ぶうちに、地球は丸い事を知り、「大地の声」だと思っていたものはボブ・マーリーのレゲエ曲であることを知り。実際には「だだん!」以外との相互関係から、何かを学ぶことを体感していく。一方、定時制に通う生徒たちや、靴屋の店主にも、それぞれ論理的とはちょっと違う、「信じている事」のようなものがある。

「(新興)宗教から」逃げてきた人の物語・・・だとすると、ある程度二元論的に「よし」「あし」の話に持ち込んでしまいそうだけれど。そうならないように、でも、ヨコと繋がるチカラは、どんなに信仰があっても逃れられない・・・みたいな、すごくフワフワしているけれど、明確な意思みたいなものが見え隠れする。群像劇として、それぞれの悩みが鮮明に浮かび上がってくるが故に、多面的な方向から感情移入出来る。多面的だと、そのフワフワとした、それぞれの「信仰」みたいなものが、舞台の中に浮かび上がって見えてくる。ラストの「だだん!」っていうのは、ちょっとクドいかな、と思ったけれど。つかみどころの無い「信仰」を、明るくハッピーに、舞台に蜃気楼のように映し出した。そんな作品のように思えた。

今回のキャスト布陣。劇団員の加藤睦望以外は、今までやみ・あがりシアターに出演したことがない役者を、意図的にキャスティングした・・・というのをどこかで読んだ。ダブる出演者が居なくてガラッと雰囲気は変わったけれど、作品の面白さはむしろ増した感覚。横長の駅前劇場も上手く使っていて、劇団としての演出力が確か。気がついたら人気劇団になっているだろうなぁ、なんて事も思う。

印象に残った役者さん。すーちゃんを演じる、土本燈子。地面を踏めなくて、おんぶしてもらうためにユーレイみたいに待っているのがインパクト強。定時制高校の先生の、大塚由祈子。感想の通りテーマはフワフワしてても、やっぱりテーマっぽい事を言い切るような台詞がいくつかある。それを、黒板を叩きながらズバズバと言い切るのが心地よい。すずき・・・もう一人の脱出した女性・・・を演じる、加藤睦望。ビルから飛び降りるシーン、下を見下ろす様子がとても印象的。導入部分からカーテンコールまで、おそらく暗転はこの一回だけだった気がするが、記憶違いかな、印象的だった。

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